Write and Run

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函館に行ってきた

別に隠す理由があるわけではないし、X を見ればどこに行っていたかなんて丸わかりなのだけれど、下記のようなツイ……ポストを見かけたので敢えて伏せて(?)書いてみるかと思って書いてみます。対戦よろしくお願いします。

私と名前を出さないあのカンファレンスとの関係

恥ずかしながら、あのカンファレンスに参加したのは今回が初めてでした。もちろん存在自体はもはや思い出せないくらい昔から知っていたのだけれど、開催情報をずっと見落とし続けており、開催当日に Twitter(当時)に流れてきた楽しそうな写真を、みんな美味そうなもの食いやがって許せんなんで誰も教えてくれなかったんだと指くわえて見て悔しい思いをしてきました。

では今回はなぜ参加できたのかというと、これは今回のベストスピーカー*1でもある id:tomo_ari (osyoyu) のおかげによるところが大きいです。彼とは同じチームで毎年 ISUCON に出場しており、どうしても Ruby で優勝するぞという合理性のない目標を掲げて一緒に闘っている仲です。そして Ruby で勝つためには正しくパフォーマンス計測ができなきゃいかんということで、彼は pf2 という Ruby のプロファイラを開発しています。

ところが我々の ISUCON チームは仲が悪い[要出典]ことで知られており、直前の練習と本番以外で顔を合わせることはほとんどありません。そのため pf2 の開発状況はチームメイト間であっても共有されておらず、果たしてその年の大会で使えるのか、そのプロファイラで分析して何がわかったのかなどは長らく謎に包まれたままでした。

そんな中、ぼちぼち今年こそはなんとしても勝ちたい*2と思った私は、pf2 はどうなっているんだ、Ruby は遅いのか、100万円は獲れるのか、というようなことを問いただすべく彼のポストを漁りました。するとちょうど例のカンファレンスでそれに関する発表をするとの予告があり、かくしてようやく、私はチケット販売期間中に例のカンファレンスの存在を知ることができたわけです。チームへの情報共有を疎かにするのは悪いことばかりではないという学びがありますね。

私とはこだて未来大学

私がはこだて未来大学を訪れるのはこれが2度目です。1度目は6年ほど前、私がまだ前職にいたときでした。はこだて未来大学の学生を対象に集中講義(のようなもの。単位は出ません)をやっていいよと言われたので、当時まだマイナー言語枠だった Rust のハンズオンをやるべく訪れたのでした。C言語の講義の内容を初めて理解できたとか、低レイヤおもしろそうだとかといった反応をいただけてホクホクで帰ったような記憶がありますが、だいぶ昔のことなので都合の良い記憶が捏造されているかもしれません。

函館名物ラッキーピエロのチャイニーズチキンバーガーを初めて食べたのもそのときです。丸一日の講義ですから学生含めてお昼ご飯の用意が必要だったのですが、休日なので食堂などは使えません。困って未来大の学生さんに相談したところ、それならと教えてもらったのがラッピでした。というかラッピ以外ありえんだろみたいなテンションで言われたような気がします。当日も、お昼ご飯はラッピ?とかいうの用意しました、という案内に多くの学生が喜んでおり、当時ラッピの偉大さを微塵も知らなかった私はそんな大げさなと思っていたのですが、食べてみて確信しました。たしかに美味い。それ以来、年一くらいで食べに行っている気がします。

なんか未来大というか半分くらいラッピの話ですが、はこだて未来大学という地に再び遊びに行けるのはとても嬉しかったです。

スポンサーブースを回る

思い起こすと、今までいろいろなカンファレンスに参加してきましたが、セッションを聞くだけでスポンサーブースは回らないということがほとんどだったように思います。毎回登壇者として行くので、スライド作成に追われてて余裕がないとか、ロビーに突っ立ってると絡まれるのでそれで時間が溶けるとか、そういうことになりがちでした。

今回は友人の発表を聞くために行ったのでとても余裕がありました。スライド作成に追われないカンファレンス参加がこれほど気楽なものだとは思いませんでした。気楽さを体験して初めて、登壇者って大変なんだなと思いました。登壇者には懇親会では発表の感想を伝えたりして労ってあげましょう。登壇者のみなさんは猛烈なプレッシャーを乗り越えて懇親会に到達しています。

それはともかく、時間がたくさんあったので、今回はスポンサーブースをじっくり回ることにしました。そもそも、参加の目的の半分は「外の風にあたる」ことでした。pf2 の発表を聞くのももちろん大事でしたが、前日にスライド作成を手伝ったりでほとんど内容を知ってしまったのでそちらばかりに意識を向け過ぎる必要もなくなっていたのです。

私は、今はいわゆるウェブ業界*3から離れ、人工衛星スタートアップで働いています。そのため、今のウェブ業界にどういう企業があるのか、どういうビジネスをしているのかという事情にかなり疎くなっていました。業界は違えど、ソフトウェアエンジニアの活躍場所としては並列です。つまり、自分の未来の転職先である可能性があると同時に、今人材を取り合うライバルでもあるわけです。知らないわけにはいかないのです。

やや打算的な書き方になってしまいましたが、まぁそんなに深くは考えていなくて、私の狭い視野と拙い想像力では、ウェブ技術は EC サイトと UGC サービスしか作れないように感じてしまう(失礼)ので、他のみなさんは一体どんなビジネスに技術を使っているのかに興味があったということです。

今回は、私の知らない会社がたくさんブースを出展していました。私にとってとても嬉しいことでした。とりあえず社名を知らないブースに行って会社紹介の紙ペラをもらい、会社の概要や創業のきっかけ、お金を払ってくれるお客さんはどんな人・会社なのか、エンジニアリングのおもしろさはどこか、などを聞いてまわりました。私の全然知らないドメインでビジネスチャンスを見つけ、そこの課題を技術で解決している人たちの話を聞くのはとても新鮮な体験でした。ブースを回るごとに新しいことを教えてもらいました。事業ドメインのおもしろさだけを語る勉強会があったら行きたいかもしれません。

概ね各社共通しているなと思ったのは、そのドメインに詳しい人が創業しているということです。そんなの当たり前だ、と思うかもしれませんが、テックカンパニーはドメイン知識だけでは成立せず技術も必要です。しかし IT 技術はどんな分野とも隣接しているわけではありません。昔から距離の近かった金融や EC などはともかく、ヘルステックや不動産といった領域にも IT 技術が深く応用されるようになったのは、IT 技術がより広い範囲の人々に行き渡った結果だと思います。その結果、あるドメインエキスパートがたまたま IT 技術を持ち合わせているという確率が高まり、おもしろいビジネスが発生しやすくなっているのだと感じます。

あこがれとふるさと

私が参加に失敗しつづけていたからというのもありますが、このカンファレンスやこのカンファレンスに登壇している人々は以前から私のあこがれでした。私自身は Perl を書きませんが、Perl を書いている・書いていた先輩たちこそ、20年前、私がプログラミングを始めたときに憧れたハッカーの姿なのです。記号だらけのよくわからないコードを書き、伝わらないジョークを飛ばし、そういう仲間と酒を飲む、それが私にはクールでした。

いくらかの参加者とはそれぞれ別の場所で会ったことがありました。そのせいか、このカンファレンスに参加したのは今回が初だったのに、すごく懐かしい感じがしました。そうか、会に参加こそしていなかったけれど、いつの間にか自分はこの文化の中にいたんだな、そう思ったのでした。

初めて来るのにふるさと、そんな不思議な体験でした。

関係ない画像

*1:おめでとうございます

*2:毎年思っています

*3:というのが今日日まともな括りとして有効かどうかわかりませんが